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 おすすめ本  『宇宙と踊る』  アラン・ライトマン 著 浅倉久志 訳 早川書房 1997年11月発行 1900円+税

 この本は、じつはかなり前に読んだのですが、ここでご紹介するのをためらっていました。
なぜかというと、絶版本だからです。本屋さんに行っても手に入れることは難しいかもしれません。
 しかし、あえてここで紹介しようと思ったのは、やっぱり私のお気に入りだからです。


 アメリカの宇宙物理学者であり、サイエンスライターとしても有名なアラン・ライトマンが書いた24の科学エッセイを、一冊にまとめた本です。

 科学エッセイといったらどんなものを思い浮べるでしょうか?
 コムズカシイ? 専門臭がする? SFっぽい? 非人間的で無機質?
 いえいえ、彼のエッセイは、科学の難しい専門用語は皆無で、とても文学的で詩情豊かな文章でつづられた、科学と芸術のエレガントな融合作品です。一言で言って美しく温かいのです。しかも科学のセンスは抜群です。行間からは、作者が科学を絵画や詩を鑑賞するように楽しみ、人間味を大切にする気持ちが豊かな果汁のようにあふれ出てきます。 まあ、いろいろなイメージを言うより、少し引用してみましょう。

まずは、「アイザック・ニュートンの来訪」を冒頭から。

 先週のある日のことだった。ケンブリッジの宇宙物理学センターにあるわたしの研究室で、またまた見当ちがいの計算を屑かごにほうりこみ、なにか新しいアイデアを与えてくださいとミューズの女神に祈っているとき、アイザック・ニュートンがはいってきた。肖像画でおなじみの顔なので、すぐに見分けがついた。
「よくここがわかりましたね」少々びっくりしながら、わたしはいった。
「道をたずねたら、マス・アベニューのホリディ・インのすぐ南側だと教えてくれてな」ニュートンはもうひとつの椅子にさっさと腰をおろした。「さて、なにを聞きたい? わしの時間は貴重だ。光学のすばらしい補習講座もあるが、金がかかるぞ」
 わたしはぐちをこぼしたい気分だった。「あなたがたの時代は楽でしたよ。最近の科学研究はたいへんなんですから。まず第一に、なにかいいアイデアを思いついても、だれかがすでに思いついたものばかり。・・・


このあと、ニュートンから万有引力の法則に関して重大な誤りがある、という打ち明け話をされ、びっくり仰天、ついに自分にも運が向いてきたか!?・・・という展開です。

 次は、アラン・グースという有名な宇宙物理学者がインフレーション理論の大事な着想を得た一日を描く「十二月のある一日」から。グースが大発見を思いつく場面を次のように想像して綴って結んでいます。

 外では、バロ・アルトの上で紺青の空がしだいに黒ずんでいく。空のさらなる高みでは、数知れぬ星々がその夜の中に割込んできた。十一時から十二時までのどこかで、ペンと紙だけを前にして書斎のデスクと向かいあったグースは、これまでの仮説とは逆に100億年前の幼い宇宙がとてつもなく急速に膨張したという数学的証拠を発見した。その直後に、やがて元素や銀河や人間を形づくることになる物質が生まれてきたのだ。

つくづく、復刻して欲しい一冊です。

[2005年3月11日更新]
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